学び直しの時代!リスキリングが社会人に求められる理由を解説

現代社会では、社会人が直面する課題は複雑化しています。これに対応するためには、既存の学びだけではなく、新しいスキルを身につけるリスキリングが必要です。この記事では、リスキリングの重要性とその現状について詳しく解説します。

技術の進歩は止まることを知りません。デジタル変革(DX)の波は、私たちが働く方法、そしてビジネスが行われる方法を根本的に変えています。この急速な変化に対応するためには、新たなスキルを学ぶことが必要となります。

ここで重要なのが「リスキリング」、つまり学び直しの概念です。リスキリングは単に新しいスキルを習得するだけではなく、既存の職場で新たな価値を生み出す力を養います。

本記事では、リスキリングがなぜ重要なのか、現状はどのようなものなのか、そしてどのように取り組むべきなのかについて詳しく解説します。未来のビジネス環境を生き抜くための新たなスキル習得、リスキリングの世界を一緒に見ていきましょう。

リスキリング(学び直し)とは?

リスキリング(Re-skilling)とは、新しい職業や役割に適応するために新たなスキルを学び直すことを指します。リスキリングは、社会人が自身のキャリアを成長させるため、あるいは企業が業界の変化に対応するために必要となる学びの一環です。

企業は従業員に新しいスキルを習得するための教育と訓練の機会を提供します。例えば、新しいテクノロジーやツールの使用法、または新たな職務に必要なスキルの学習が含まれます。

とりわけテクノロジーが急速に進化し続けている現代において、自身のスキルセットを常に更新し続けることが求められます。これは従業員一人ひとりの自己成長やキャリア実現を図る上でも重要であり、生涯に渡って仕事の機会を得るためにも欠かせないものとなっています。

リスキリングが注目される背景

近年、デジタル変革(DX)の進展により、多くの業種で業務内容や必要なスキルが大きく変化しています。そのため、社会人がこれまでに習得してきたスキルだけでは十分でなく、新たな技術や知識を学び直すリスキリングが求められています。

デジタル変革(DX)の加速

 テクノロジーの急速な進化とDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進により、ビジネスの構造とプロセスが劇的に変化しています。この数年で、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、生成AIなどの新たな技術の導入により、多くの業種で業務内容が大きく変わりました。これに対応するためには、従業員が新たなデジタルスキルを習得することが必須となっています。

労働市場の変化

労働市場もまた、テクノロジーの進化とともに変化しています。一部の業種や職種は自動化やAIに置き換えられ、一方で新たな職種や専門分野が登場しています。このダイナミックな変化に対応するためには、社会人が自身のスキルを再評価し、必要な場合は新しいスキルを学び直すリスキリングが求められます。

生涯学習の重要性の認識

今日の急速に変化する労働環境では、一度学んだ知識やスキルが一生ものとは限りません。新たなテクノロジーや業界の動向を理解し、対応するためには、社会人として生涯学習の精神を持つことが必要です。この認識の下、リスキリングが重要な取り組みとして認識されています。

リカレント教育との違い

リスキリングとよく比較される概念が「リカレント教育」です。リカレント教育は、生涯にわたって継続的に学び続けることを意味します。しかし、リスキリングはこれと異なり、特定の新しいスキルや専門知識を具体的に学び直すことに焦点を当てています。

つまりリスキリングは比較的短期間で特定の目標に向けて行われる学習活動ともいえるでしょう。例えば、ある社員が従来はマーケティングの役割を担っていましたが、会社がデータドリブンな意思決定を推進しているため、データ分析のスキルが必要になったとします。この社員がデータ分析のスキルを習得するために学び直す活動がリスキリングとなります。

一方、リスキリングは一時的な学習で終えるのではなく、技術の進歩や業界の変化に適応するためには定期的に行われるべきものともいえます。そのため、リスキリングは一種の生涯学習とも捉えることができるでしょう。ただし、その焦点はあくまでも特定の新しいスキルや知識の習得にあります。

リスキリングの現状について

リンクアカデミーの最新調査では、企業のリスキリング施策は増加傾向にあると伝えています。リスキリングを実施している企業の割合は、2023年の調査では52.6%が既に取り組んでおり、2022年の15.9%に比べて大幅に増加しています。さらに、42.4%が取り組むことを決めているか検討しており、何も取り組めていないという回答は5.0%でした。

一方、リスキリング対象者層では42.8%が既に取り組んでおり、44.1%が取り組むことを決めているか検討しています。いずれもリスキリングへの取り組み状況は大きく改善されており、2022年に比べて増加していることがわかります。

出典:リンクアカデミー

具体的なリスキリング施策としては、ITスキルを強化するための資格試験や研修の実施です。特にリスキリング対象者はITスキルに関する研修の提供を求めており、2023年度調査では52.0%の割合を示しています。また、リスキリングによって高めたいスキルも多様化しており、基本的なスキルに加えて、RPAやプログラミングなどの中程度から高度なスキルにも関心が寄せられているようです。

このようにリスキリングへの取り組みは進んでおり、従業員も積極的に参加しています。とりわけ企業がDX推進を目指す上で、管理職や中堅層のITスキル教育が重要なポイントです。リスキリングによって従業員のスキルをアップさせることで、企業の競争力向上やデジタル化への対応が期待されています。

出典:リンクアカデミー

リスキリングを行う方法

リスキリングは、オンライン学習プラットフォームの利用、専門的な訓練プログラムへの参加、企業内の研修など、さまざまな形で行うことができます。それぞれ、学習スタイルや学習内容が異なるため、個々の現在の職業やライフスタイル、そして将来のキャリア目標にしたがって検討してください。

オンライン学習プラットフォームの活用

オンライン学習プラットフォームなどは、多岐にわたるトピックで専門的なコースを提供しています。こうしたプラットフォームは自己学習を可能にし、自分のペースで学び、スキルを習得できます。

  • メリット: 自分のペースで学習を進められる、多彩なコースが用意されている、時間や場所の制約が少ない
  • デメリット: 学習計画など自己管理能力が求められる、学習の進行状況の管理やサポートが限られる場合がある

専門的な訓練プログラムへの参加

社会人スクールやブートキャンプなどは、特定のスキル(例:プログラミング、データサイエンス)に集中して訓練を提供します。実践的スキルを短期間で習得することを目指しているため、高い学習効果が見込めます。

  • メリット: 専門的なスキルを集中的に学べる、手厚い指導・サポートを受けられる、プロジェクトを通じた実践的な学びが得られる
  • デメリット: 費用が高い、時間的なコミットメントが必要、利用可能なプログラムが地域やスキルにより限られる可能性がある

企業内研修の活用

企業が従業員のスキルアップを支援するために、独自の研修プログラムを提供することがあります。これらのプログラムは、企業の目指すビジョンや戦略に直結したスキルを育成することに焦点を当てています。

  • メリット: 企業のビジョンや戦略に沿った学習、企業資源(専門家や教材)の利用、学習内容を直接職場で活用できる
  • デメリット: 企業のリソースや研修プログラムの質に依存する、提供される研修が限られる場合がある、一部の企業では教育・訓練への投資が不十分な場合がある

リスキリングを企業が行うための補助金

リスキリングは日本の政策として導入されることが明言され、現在では補助金も支給されています。しかし、本格的に導入しようとすると、どういった補助金があるのか疑問に持たれる方も多いでしょう。ここでは、2023年7月時点で給付されている補助金制度を解説します。

DXリスキリング助成金(東京都の法人)

DXリスキリング助成金は、東京都が提供する制度で、都内の中小企業が自社の従業員に向けて、民間の教育機関などが提供するデジタル関連講座を提供する際の費用を助成します。

オンラインで提供される講座も補助対象となっています。ここで取り上げたのは東京都の例ですが、他の都道府県でも類似の助成金を設けている可能性があります。詳しい情報は、各企業が所在する地域の自治体に問い合わせてみてください。参考:公益財団法人東京しごと財団

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、厚生労働省が企業向けに提供している補助制度で、業務関連の専門的な知識や技術の職業訓練にかかる経費の一部を助成します。デジタル分野だけでなく、広範な領域が対象です。

この助成金には7つのコースがありますが、デジタル領域に関連するものとしては、「事業展開等リスキリング支援コース」および「人への投資促進コース」の2コースが注目されます。これらは、新規事業への展開、新製品開発、デジタル化の推進など、デジタル分野のリスキリングを対象としています。参考:厚生労働省

実際にリスキリングを行った事例

リスキリングの重要性や進め方は理解できたものの、実際にリスキリングにどのような成果がもたらされるのかイメージが掴めない方も多いでしょう。ここでは、実際にリスキリングを行い、事業成長へと繋げた中小企業の事例を3つ紹介します。

陰山建設株式会社

福島県の建設会社、隂山建設は、社員の90%がドローンの運転免許を取得し、全ての空撮を自社で行うというデジタルスキルの導入を進めました。また、建設の全工程をデジタル管理し、顧客とリアルタイムの情報共有を可能にするアプリ「ビルディング・モア」を開発。その開発過程では全社員が使えるシンプルさを追求し、アプリ開発の会社を立ち上げ、地元のITベンチャーの協力を得て共同で開発を進めました。また、社内にDX推進室を設置し、全員が新しい技術を使いこなせるように取り組んでいます。このようなリスキリングとDX推進により、隂山建設は新卒の入社希望者が増え、再入社を促すなどのポジティブな影響を得ています。

参考:中小企業のリスキリング入門

株式会社陣屋

陣屋は、観光業と旅館運営を核に多角的なビジネス展開を行っています。その中で、全スタッフが業務の効率向上を目指し、IoT技術の積極的な利用を推奨しています。

デジタルツールに対する詳細な学習やデジタル操作エラーの許容など、独自の取り組みを通じて、サービスの品質を向上させ、常連客の増加を達成しています。

参考:中小企業のリスキリング入門

久野金属工業株式会社

久野金属工業では、デジタル変革を通じてのリスキリングに成功しています。自社開発した基幹システムは、システム理解を促進し、従業員の自発的なシステム利用を後押し。その結果、業務時間の短縮や生産性の向上が達成されました。また、従業員が自身で自動化を提案し、それを実現する環境が整備されており、問題解決やデジタル技術の活用を推進しています。さらに、全社を対象とした情報共有活動「5GEN 5min(ごげん ごみん)」にて、自発的な学びと情報伝達を促進。これらの取り組みが織り成す良好な循環により、従業員はデジタルスキルを自発的に身につけ、組織全体の成長を実現しています。

参考:中小企業のリスキリング入門

まとめ

リスキリングは、社会人が現代社会の変化に対応する上で重要性が高まっています。DX化の普及やAI技術の進歩にあわせ、新たなスキルを学び直すことの必要性は増しています。これに対応するためには、リスキリングの機会を提供し、社会人が自身のキャリアを成長させるサポートをすることが求められます。

もし、「どのようにリスキリングを導入すればよいかわからない」「リスキリングの必要性を従業員に理解してもらえるか不安」といった場合は、ぜひ『あなたの社長室』にご相談ください。

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