ティール組織とは?既存の組織との違いや、メリット・デメリットを解説

企業DXによる生産性向上や労働人口の減少に伴い、企業経営も変革が求められています。そうした中、新しい時代に最適な経営スタイルとして近年注目を集めているのが「ティール組織」です。

しかし、ティール組織とはどういった経営スタイルなのか、これまでの組織形態と何が違うのか、どういったメリットが得られるのか、といったことに疑問を抱く方も多いでしょう。そこで本記事では、現代の変わりゆく経営環境に適応するための新しい組織モデル、ティール組織について詳しく解説します。

ティール組織の特徴やメリット、さらに国内企業での成功事例まで紹介しますので、最後までご覧いただくことでティール組織を一通り理解できるでしょう。時代にあった組織の在り方を模索している経営者のみなさまにとってお役に立てれば幸いです。

ティール組織とは

ティール組織は、現代のビジネス環境において、従来の組織構造を超えた新しい経営スタイルとして注目されています。この組織スタイルは、高い柔軟性と効率性を持ち、変化の激しいビジネス環境に迅速に対応できます。

主な特徴としては、以下の点が挙げられます。

  • セルフマネジメント:組織内の上下関係を超えて、各個人が自らの業務や役割を自律的に管理します
  • 企業目的の共有:企業の目的を共有し、その実現に向けた行動をとることで、組織全体の目標達成を促進します
  • コミュニケーションの強化:組織変化への対応力が高まり、チームや個人間のコミュニケーション向上につながります

これらの特徴を活かすことで、より柔軟かつ主体性にあふれた組織へと生まれ変わります。ティール組織は企業の持続的な成長や成功の鍵となるでしょう。

ティール組織が注目される背景

「ティール組織」という概念は、2014年にフレデリック・ラルー氏の著書『Reinventing Organizations』で紹介されました。ラルー氏は、長年の組織改革プロジェクトの経験を持ち、エグゼクティブ・アドバイザーやファシリテーターとしての活動を経て、世界中の組織を調査。その結果、従来の組織モデルとは異なる新しい組織モデルの考察を『Reinventing Organizations』にまとめました。

同著は世界中でベストセラーとなり、2018年には日本でも『ティール組織』というタイトルで邦訳版が出版されています。これがきっかけとなり、日本のビジネス界でもティール組織が注目されるようになりました。

組織モデルに関する多くのビジネス書が存在する中、『ティール組織』が特に注目された理由は、従来のマネジメント常識を覆す新しい考え方や組織構成を提案しながら、そのモデルを採用した組織が実際に成果を上げた事例が多数紹介されているためです。

従来の組織モデルは、階層的な権限構造や縦割りの決定プロセスにより、変化の激しいビジネス環境に迅速に対応することが難しくなっていました。これに対し、ティール組織は組織全体の柔軟性を高め、社員の自主性や創造力を前面に出すことで、変化に対する迅速な適応や新しい価値の創出を促進します。

ティール組織5つのモデル

ラルー氏が提唱するティール組織には、5つの組織モデルが存在します。これらは、それぞれ異なる特徴を持ち、組織の状況や抱えている課題に合わせて最適な組織モデルを選択することが求められます。

  1. レッド(衝動型)
  2. アンバー(安定型)
  3. オレンジ(達成型)
  4. グリーン(共感型)
  5. ティール(進化型)

続いて、それぞれの組織モデルの特徴を詳しくみていきましょう。

レッド(衝動型)

レッドモデルは、衝動的で力に基づく組織のあり方を示します。このモデルでは、強いリーダーが支配し、部下はその指示に従うという上下関係が見られます。軍隊や犯罪組織などがこのモデルの典型例です。

このモデルは、厳格なルールや階層構造が求められる場面において効果を発揮します。一方、リーダーの意思決定に依存しすぎることで、個々の能力や主体性の発揮が制限されることが課題です。

アンバー(順応型)

アンバーモデルは、伝統的な権威主義に基づく組織で、軍隊や宗教団体などに見られます。役割と規則が明確で、上下関係が強調されます。そのため、組織の目的を達成するために、上司の指示に従って行動することが求められます。
この組織モデルは安定性と規律を維持する力があり、組織内での意思決定や問題解決を迅速かつ効率的に行うことが特徴です。一方、アンバーモデルの課題としては、個人の自主性や創造性が発揮しにくく、変化への対応が難しいという側面もあります。

オレンジ(達成型)

オレンジ組織は、成果を中心とした組織形態で、企業やビジネス界でよく見られます。目標達成や競争力の向上を重視し、業績管理や評価制度を導入していることが特徴です。

オレンジモデルのメリットとしては、従業員の自己成長やスキル向上に比例して、組織の業績向上が期待できることです。一方、オレンジ組織では短期的な利益追求や競争意識が強くなりすぎることで、人間関係やチーム力が低下するリスクもあります。

グリーン(多元型)

グリーンモデルは、多様性や共創を重視する組織モデルで、チームワークや人間関係に焦点を当てています。組織全体での意思決定や、個々のメンバーの自主的な参加が特徴です。

グリーンモデルのメリットは、社員が互いに尊重し合いながら相互協力し、イノベーションを生み出せる点が挙げられます。一方、意思決定が遅くなることや、組織の一部に業務負担が偏るリスクもあります。

ティール(進化型)

ティールモデルは、個人と組織の同時成長を目指す組織形態です。自主性と責任を重視し、組織の目的や運営は自己組織化され、セルフマネジメントが前提となります。

ティール組織では、従業員が自身の役割や業務を柔軟に変えることができるため、組織全体が変化に適応しやすいというメリットがあります。一方、適切なサポートが不足すると、一部の社員が業務負担に苦しむリスクがあります。

ティール組織のメリット

ティール組織が多くの企業や団体で採用される背景には、その独特な組織モデルが持つ多くのメリットがあります。以下に、ティール組織の主なメリットとその詳細を解説します。

柔軟性の向上

ティール組織の特徴として、個々の社員が自主的に判断や行動を行うことができるため、組織全体が変化や外部からの要求に迅速に対応可能です。また、メンバーの多様な意見や提案が尊重される文化が根付いており、これが新しい取り組みやアイディアの試行につながります。

自己成長の促進

ティール組織は、社員の自主性と責任を前面に出すことで、トップダウンの指示に頼るのではなく、自ら考えて行動することを奨励します。これにより、社員は日々の業務を通じて自己成長を実感し、スキルアップの機会を増やすことができます。

イノベーションの創出

ティール組織のもう一つの大きなメリットは、組織内での情報共有やコミュニケーションが非常に活発であることです。異なる分野やバックグラウンドを持つメンバーが協力してアイデアを出し合う文化が根付いており、これが新しい価値創造や革新的なサービス、製品の開発につながります。

ティール組織のデメリット

ティール組織は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。以下に、ティール組織の主なデメリットとその詳細を解説します。

適応力の要求

ティール組織ではセルフマネジメントや自己組織化を重視するため、従来の組織構造から移行する際は一定の適応期間が必要です。とりわけ組織のメンバーは、新しい組織文化や役割に適応し、自らの責任範囲を明確に捉える能力が求められます。経営者や部門管理者は、現場で混乱が生じないように、ティール組織へ変える背景や目的を丁寧に説明することが大切です。

成果への責任と評価方法の問題

ティール組織では、従業員一人ひとりが成果に対し責任を持つことになります。従来の組織では明確な評価基準や指示が存在するのに対し、ティール組織では評価基準が多様化し、個人の自主性に基づく評価が中心です。

評価基準が定まっていないと、評価が曖昧になり、従業員のモチベーション低下にもつながるでしょう。そのため、公平な評価を行うための新しい基準や方法を確立することが大きな課題といえます。

組織全体の統制力の弱さ

ティール組織では、その特性から意思決定が分散されるため、組織全体の方向性や統一感が希薄になる可能性があります。これにより、組織の目的やビジョンを共有することや、一貫した行動を取ることが難しくなるでしょう。

例えば、管理が行き届かずトラブルの増加や、従業員の帰属意識が低下し離職率に影響を及ぼす可能性もあります。組織の成長や目標達成にマイナス影響を与えるリスクもあるため、組織の統制力が問われるでしょう。

ティール組織と既存組織の違い

ティール組織と従来の組織は、マネジメントのスタイルや目標設定の方法において大きな違いがあります。従来の組織は階層型で、明確な上下関係が存在し、リーダーの指示に基づく運営が中心です。

一方、ティール組織はセルフマネジメントを採用し、階層を排除。これにより、メンバーは自主的な意思決定を行い、自らの創造性を最大限に活かすことができます。さらに、目標設定においても、従来の組織が上層部からの指示に基づくのに対し、ティール組織ではメンバー自身が目標を設定し、それを達成するための活動を行うことが大きな違いです。

ティール組織の導入事例:成功企業とその秘訣

ソーシャルメディアやWebマーケティング事業を手がける株式会社ガイアックスは、上場企業でありながら、ティール組織の特徴を多く取り入れた組織作りを進めています。同社では「フリー・フラット・オープン」を掲げ、個人の裁量を尊重し、議事録の公開から事業部の独立までを推進しています。

ガイアックスでは入社時に「ライフワークミッション研修」を実施し、メンバー自身が自分の個性や価値観を見つめ直しています。組織作りもトップダウンではなく、ボトムアップでの事業戦略作成を重視するなど、オープンな経営を行っています。

一方、上場企業としての形を保ちつつ、自律分散的な組織を目指す過程で、外部からは一見わかりづらい組織となっており、社員をはじめ周囲への理解を得ることに時間が掛かっています。このように、ガイアックスではティール組織を目指す過程で、社員の自主性や責任感を重視し、組織全体の目標と個人の目標を一致させることが、組織を作り上げる鍵だと捉えています。

まとめ:ティール組織への挑戦を踏まえた企業の未来像

ティール組織は、従来の階層型組織とは異なる新しい組織モデルとして注目されています。従来型の組織モデルと異なり、個人の自主性や自己組織化を重視し、階層や上下関係を排除した組織運営が特徴です。

今後、多くの企業がティール組織の考え方を取り入れ、より自主的で創造的な組織へと変革していくことが予測されますので、業界・企業規模問わず企業経営者は、自社の組織体制について検討することをおすすめします。

もし、「どのようにティール組織を導入すればよいかわからない」「ティール組織の必要性を従業員に理解してもらえるか不安」といった場合は、ぜひ『あなたの社長室』にご相談ください。

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