人手不足解消!テレワーク導入で変わる企業の人材採用戦略とは?
国内の人口減少とそれに伴う人材不足の影響により、多くの企業経営者が経営課題に直面していることでしょう。
特に地方の中小企業にとって、優秀な人材の定着および獲得は持続的な事業成長に欠かせません。
若手人材の都市部への流出が一層懸念される中、採用課題の解決策として注目されるのが「テレワーク」の導入です。
テレワークは出社を前提とせずに、自宅やシェアオフィスなど会社以外の場所で勤務する就業形態です。
働く場所の制約を無くすことで、広範な人材獲得と労働力の活用が可能になります。
しかし、テレワークは新しい働き方であるため、どういった利点があるのか、具体的にどのように進めればよいかイメージが湧かない方も多いでしょう。
そこで本記事では、テレワークのメリットとデメリット、テレワークを導入するポイントまで詳しく解説します。
時代の変化に対応し新しい働き方を採用したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
人口減少がもたらす社会への影響とは
国内の人口減少は急速に進行しており、特に地方では若年層の流出も深刻な問題となっています。
現在日本の総人口は約1億2,500万人ですが、2070年には9,000万人を割り込むと予想されています。
とりわけ高齢人口が年々増加するのに対し、生産年齢人口(15歳〜64歳)が減少するため、高齢化率は39%の水準になると推計されています。
これによってどのような影響がもたらされるのでしょうか。ここでは、地域社会に与える影響と、地場企業に与える影響について考えてみたいと思います。
地域社会に与える影響
地域社会における人口減少は、直接的に地域経済の活性化を阻害します。
その地域で生活する人々が減れば、消費活動が減少し地域経済の縮小を招く可能性があります。
そもそも、私たちが日常生活を送るために必要なサービス(小売、飲食、宿泊、金融、医療・福祉など)は、一定の人口規模のうえに成り立っています。
これら生活関連サービスの維持に必要な人口規模を割り込んでしまうと、サービスや産業の撤退が進み、日々の生活が不便になってしまうのです。
さらに、税収減による行政サービスの低下や、公共交通機関の徹底・縮小が余儀なくされるなど、地域の生活に与える影響は大きいものとなっています。
地場企業に与える影響
企業にとっては、人口減少は「サービスの縮小」と「労働力の減少」という形で影響を与えます。
とりわけ生産年齢人口が減少することで、人材採用の難しさが増し、採用コストの上昇が避けられません。
近年では、「人手不足倒産」の件数も増加しており、企業経営に直結する課題となります。
また、地域から若年労働力が流出することで、新しいイノベーションや企業間の競争が生まれにくくなり、地域でビジネスを興す起業家や、地元で働き続けたいという若手人材がいなくなってしまいます。その結果、中小企業のビジネスの継続性を脅かす恐れがあります。
テレワークの普及率について
働き方改革の一環として、テレワーク(在宅勤務)の導入が企業に求められています。
特に、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言をきっかけに、多くの企業が急遽テレワークを導入しました。
国土交通省が発表したテレワーク人口実態調査によると、令和2年(2020年)以降、テレワーカーが急増しており、特に企業規模が大きくなるほど割合が大きいことがわかります。
画像出典:令和3年度テレワーク人口実態調査ー調査結果ー|国土交通省
2023年5月には、国内では新型コロナウイルスは5類感染症に移行され、WHO(世界保健機関)でも緊急事態宣言修了を発表したことから、企業のテレワークの導入率は減少傾向にあります。
一方、テレワークを経験した就業者の84%が、新型コロナウイルス収束後もテレワーク継続意向にあります。
つまり、新型コロナウイルスをきっかけにテレワークを経験したことによって、場所にとらわれない新しい働き方を模索する方が増えていることがわかります。
画像出典:令和3年度テレワーク人口実態調査ー調査結果ー|国土交通省
実際テレワークを継続している企業は人材採用に成功しています。
地方の中小企業であっても、有名大手企業出身の優秀な人材を獲得できるチャンスとなっています。
テレワークを採用するメリット
企業がテレワークを採用することで、数多くのメリットが得られます。
ここでは主なメリットを5つ紹介します。
メリット1:優秀な人材の獲得
テレワーク導入の一番のメリットは、地理的な制約を取り払い、広範囲から優秀な人材採用が可能になる点です。
特に、都市部に居住する人材とも連携が取れるため、中小企業でも高度な専門知識を持つ人材を獲得するチャンスが広がります。
メリット2:労働生産性の向上
テレワークは、従業員の働き方を自由にし、ワークライフバランスの向上に寄与します。
通勤ストレスが減り、睡眠時間や趣味に使う時間が増えることで、仕事に対する集中力が高まります。
また、ITツールを活用することで、紙書類のやり取りや無駄なコミュニケーションがなくなるため、労働生産性の向上をもたらします。
メリット3:オフィス運営コストの削減
テレワーク導入により、社員全員がオフィスに出社する必要がなくなります。
これにより、オフィスの維持・運営にかかるコストを大幅に削減することが可能です。
特に、固定費用の軽減は中小企業にとって大きなメリットといえます。
メリット4:従業員の健康管理
テレワークは従業員の健康管理に寄与します。
通勤時間の削減により、ストレス軽減や生活リズムの改善が見込まれます。
長期的な従業員の健康維持と生産性向上につながり、離職率の低下も期待できます。
メリット5: 雇用機会の均等化
テレワークは、子育て中の女性や介護を必要とする人々、障がいを持つ人々など、従来の働き方が難しかった人々にとって新たな雇用機会を提供します。
これにより、企業は多様な視点を持つ人材を採用し、イノベーションの源泉とすることが可能になります。
テレワークを採用するデメリット
テレワークには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します
テレワークの採用を検討する際は、不測の事態やリスクが生じることをあらかじめ想定した上で、臨機応変に対応していくことが求められます。
一方、テレワークは新しい働き方として注目されていることも事実です。
過度にリスクを不安視するよりも、まずはやってみて、やりながら改善を繰り返すといったフットワークの軽さも求められます。
ここではテレワークを採用するデメリットを3つ解説します。
デメリット1:コミュニケーションの難しさ
テレワークは、基本的に出社を前提とせず、オンライン上でコミュニケーションを図ります。
オフィスなどで直接顔を合わせないため、軽微な業務依頼や相談、何気ない雑談といったコミュニケーションが取りにくいことがネックです。
特に情報の伝達や指示を与える際に正確性が求められます。
直接であればニュアンスで伝わることもありますが、曖昧な指示では認識の相違が生じる恐れがあります。
デメリット2:セキュリティリスクの増加
リモートワークでは、自宅やシェアオフィスなど外部環境で業務を行うため、セキュリティトラブルのリスクが高まります。
パソコンやモバイル端末の紛失や、サイバー攻撃による情報漏洩が発生すれば、問題解消に大幅な時間を取られる上、社会的な信頼失墜は免れません。
重要な機密情報が外部に漏れるリスクを最小限に抑えるためにも、適切なセキュリティ対策が求められます。
デメリット3:ワークライフバランスの維持
テレワークは自宅を拠点とすることが多いため、家庭と仕事の境界が曖昧になりやすいこともデメリットとして挙げられます。
仕事とプライベートの切り替えが難しくなり、過労やストレスが増える恐れがあります。
一方、従業員の勤務状況を正確に管理出来ないため、人によっては職務怠慢に陥りやすいことも課題です。
その日の始業時に予定を共有させたり、定期的なタイミング(例えば、お昼休憩後や終業前など)で進捗状況を報告させたりするなど、集中を切らさない仕組みを作ると良いでしょう。
デメリット4:一体感や帰属意識の醸成
テレワークでは直接対面で会う機会が少ないため、他の同僚との一体感や会社に対する帰属意識の醸成が難しいことが挙げられます。
特にチームワークを重視する企業や、理念やビジョンへの共感を求める企業においては、課題に感じられる可能性があります。
また、一体感や帰属意識が希薄になりがちであるがゆえに、定着率が低く離職につながりやすいこともネックです。
テレワークを現場に取り入れるステップ
テレワークを成功させるためには、事前の準備と導入後のフォローアップが重要となります。
ここでは、テレワーク導入に向けた具体的なステップを紹介します。
テレワーク導入を検討する際は、これらのポイントを意識することで、より多くのメリットを享受できます。
ステップ1: テレワークポリシーの策定
テレワーク導入の最初のステップは、企業全体のテレワークポリシーを策定することです。
たとえば、テレワークに適用される作業時間、テレワーク中の連絡方法、データの安全性を保つためのセキュリティ対策についてルールを策定します。
明確なガイドラインを設けることで、利用者や管理者の混乱を避け、効率的な運用を進めることができます。
また、テレワークポリシーは一度策定して終わりではなく、定期的に見直しを図り、運用状況に応じて改善することが重要です。
ステップ2: 必要なツールと環境の整備
テレワークに必要なツールと環境を整えることも重要です。
たとえば、パソコンやスマートフォンなどのハードウェアのほか、オンラインミーティングツールやビジネスチャットツールといったソフトウェアが必要です。
その他、業務で使用するクラウドツールがあれば、アカウントを発行しアクセス権限を付与しましょう。
ステップ3: トレーニングとサポート
テレワーク導入時には、新しいツールの使用方法やテレワーク特有の働き方を理解するためのトレーニングが不可欠です。
ビデオ会議ツールの操作やタスク管理法などを学び、自宅での効率的な業務遂行を支えます。
FAQや業務マニュアルなどの教育コンテンツを作成したり、業務に慣れるまではフォロー役を付けたりして、困りごとに速やかに対処する仕組みを作ることが大切です。
ステップ4: フィードバックと改善
テレワーク導入後も、従業員からのフィードバックを定期的に収集し、運用方法を改善し続けることが重要です。
改善を繰り返すことで、テレワーク環境でも十分なパフォーマンスを発揮できるようになり、業務生産性の向上と従業員満足度の向上が期待できます。
たとえば、定期的な従業員アンケートの実施や、面談を通じて従業員からフィードバックを収集するなどが挙げられます。
それらを通じて、テレワークをやってみた感想や、使っているツールの使用感・問題点、社内コミュニケーション上の課題点などを確認します。
テレワーク以外の柔軟な働き方とは
雇用の流動化や多様な人材確保が求められる中、一人ひとりに合った柔軟な働き方を受け入れることは、新たな人材の確保と生産性向上に貢献します。
複数の働き方を組み合わせることで、従業員の定着や優秀な人材の確保など採用力向上をもたらすでしょう。ここでは、テレワーク以外の柔軟な働き方を3つ紹介します。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度は、従業員が自分の働きたい時間帯を自由に選べる制度です。
たとえば、実働8時間のフレックスタイム制で、コアタイムが11時〜15時とした場合は、11時〜15時の稼働は必須ですが、始業と終業時間は自由となります。
これにより、プライベートの予定を入れたり、その日の体調に合わせて始業時間や終業時間を調整したりなど、フレキシブルな働き方が可能になります。
ジョブシェアリング
ジョブシェアリングとは、一つの職位や業務を複数の人材が分担して遂行するという働き方を指します。
これにより、一人当たりの労働時間が減少し、柔軟な働き方が可能となります。
ジョブシェアリングの大きなメリットとして挙げられるのが、ワークライフバランスの向上です。
たとえば、子育てや家族の介護など、仕事以外の時間を確保したい従業員にとっては、働き方の一つの選択肢となるでしょう。
また、ジョブシェアリングは、業務の効率化と品質向上にも寄与します。
仕事を分け合うことで、スキルの補完や知識の共有が促進されたり、違った視点で考えたりすることによって、より質の高い仕事が期待できます。
まとめ
人口減少とそれに伴う人材不足は、地域社会と企業に大きな課題をもたらしています。しかし、この困難な状況は、新たな働き方を模索し企業の柔軟性を高めるチャンスでもあります。テレワークはその一つで、人々が働く場所の制限を取り払い、都市部から地方への人材流動を促進するなど、地方の企業にとって新たな可能性を秘めています。
しかし、テレワークのメリットを最大限に引き出すためには、ポリシー策定、環境整備、適切なマネジメント、そして継続的な検証と改善が欠かせません。
また、テレワーク以外にも多様な働き方があります。従業員や求職者のニーズに応じて、柔軟な働き方を取り入れることで、人材不足の解消と生産性向上をもたらします。
もし、「自社にどういった働き方を導入すべきかわからない」「テレワークの従業員を適切に管理できるか不安」といった不安をお持ちの際は、ぜひ『あなたの社長室』にご相談ください。
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