HRBP(HRビジネスパートナー)とは?従来の人事との違いを解説
企業が経営目標の達成や業績の向上を目指す中、企業の成長をサポートする役割として近年注目されているのが、HRBP(HRビジネスパートナー)です。
特に、社会環境の変化や人材獲得競争の激化が進む現代において、経営的視点を持ったHRBPの存在は、経営的視点での人材戦略を強化し、企業の競争力を高める鍵となります。
しかし、HRBPとはそもそも何か、どのように導入すれば良いのか、疑問を抱く方も多いでしょう。そこで本記事では、HRBPの役割や導入のステップ、成功事例などを詳しく解説します。
目次
HRBPとは?HRBPの設置率
HRBP(HRビジネスパートナー)は、企業の経営戦略と人事戦略を結びつける役割を持つ専門家のことです。具体的には、経営目標の達成をサポートするために、事業部と人事部の間に立ち、双方のニーズを深く理解しながら両部門の橋渡し役を担います。
HRBPがその役割を最大限に発揮するためには、経営的な視点が欠かせません。経営層の意向や事業部門の要望を人事戦略に反映させながら、組織全体の業績向上や事業成長を実現する姿勢が求められます。
HRBPの設置率
戦略人事の実現・推進に向けて、HRBPや事業部人事の役割が年々注目されています。調査結果によれば、HRBPの設置率は11.3%、HRBPではない事業部人事の設置率は27.5%でした。
特に、企業規模が大きいほど、HRBPや事業部人事の設置率が高くなっています。業種別では、「製造業、インフラ業」「情報通信業」においてHRBPの設置率が高いことが示されています。
従来の人事との違い
HRBPは従来の人事と何が違うのか、イメージを掴めない方も多いでしょう。実際、HRBPを正しく機能するためには、従来の人事との違いを把握することが不可欠です。ここでは主な違いを3つ解説します。
戦略的な視点
従来の人事は、採用や教育、評価などの日常的な業務を中心に行っていました。これに対して、HRBPは経営層と連携し、経営戦略に基づいた人事戦略の策定と実行を行うことがミッションです。
具体的には、経営目標や中長期的なビジョンに合わせて、人材の配置や育成、組織の構造を最適化する役割を果たします。
ビジネスパートナーとしての役割
HRBPの役割は単なる後方支援に留まりません。そこから一歩進んで、事業部門との連携を深める「ビジネスパートナー」としての役割を果たします。
例えば、事業部門の課題やニーズを直接把握し、それに応じた人事施策を提案・実行することで事業の成功をサポートするのがHRBPの本来の役割です。また、経営課題の解決に向けて、事業部門と共に取り組む姿勢が求められます。
変革を推進するチェンジエージェント
従来の人事は組織の安定や維持を主な目的としていたのに対し、HRBPは組織の変革や成長を促進する「チェンジエージェント」としての役割を担います。
具体的には、市場や業界の変化、技術の進化など、外部環境の変動に柔軟に対応するための組織変革を推進します。組織に新しい価値を創出するための取り組みをサポートすることがHRBPに求められるミッションです。
HRBPが求められる背景
近年、企業の経営環境は大きく変化しています。この変化の中で、従来の人事業務だけでは対応しきれない課題が増えてきたことから、HRBPの役割が強く求められるようになりました。ここでは、HRBPがなぜ必要とされるのか、その背景を3つの観点から詳しく見ていきましょう。
社会環境の変化と経営課題
グローバル化の進行や技術革新、多様性の増加など、社会環境の変化が加速しています。これに伴い、企業の経営課題も多様化し、複雑化している状況です。
特に人材の確保や育成、組織の変革など、人事に関連する課題が増えてきており、これらの課題に対応するための戦略的な人事が求められています。
人材獲得競争の激化
現代のビジネス環境では、優秀な人材を獲得・確保することが企業の競争力を左右する重要な要素です。特に国内の労働人口の減少やデジタル人材不足により、人材確保の難易度が年々高まる中、HRBPは経営戦略と連動した人材戦略を策定し、企業の成長をサポートする役割を果たしています。
VUCA時代の経営環境
VUCAとは、「Volatility:変動性」、「Uncertainty:不確実性」、「Complexity:複雑性」、「Ambiguity:曖昧性」)の頭文字から取った造語です。この言葉が示すように、現代の経営環境は不確実性や複雑性が増しています。
こうした環境下で、企業は柔軟に変化に対応する必要があり、そのための組織変革や人材育成の戦略が必要となっているでしょう。HRBPは、このVUCA時代の経営環境に対応するためのキーパーソンとしての役割を担っています。
HRBPに求められるスキル(チェンジエージェント)
HRBPが果たす役割は多岐にわたり、それに応じて様々なスキルが求められます。特に、組織の変革を推進する「チェンジエージェント」としての役割を果たすためには、特定のスキルが不可欠です。ここでは、HRBPに求められる主要なスキルを3つの観点から詳しく解説します。
経営的視点と戦略的思考
HRBPは経営戦略と連動した人事戦略の策定を行います。そのため、企業のビジョンやミッションを理解し、それに基づいた戦略的な思考が求められます。
また、市場の動向や業界の変化を常に監視し、それらの情報をもとに経営目標に合わせた人材戦略を策定する能力も必要です。こうしたスキルは、経営層とのコミュニケーションや事業部門との連携を円滑にする上で大きな役割を果たします。
コミュニケーション能力
HRBPの役割は、事業部門や経営層との連携が中心となります。そのため、異なる部門や役職の人々とのコミュニケーション能力が欠かせません。
具体的には、課題のヒアリングや提案のプレゼンテーション、意見の調整など、多岐にわたるコミュニケーションを効果的に行うスキルが必要です。また、異なる背景や価値観を持つ人々との関係構築も求められます。
変革を推進する意欲と柔軟性
組織の変革を推進するHRBPには、新しい取り組みや方法に対するオープンな姿勢と、変革を推進する意欲が求められます。変化の激しいビジネス環境の中で、組織やチームをリードするための柔軟性や適応力も必要です。
特に、新しい技術や手法の導入、組織文化の変革など、組織の変革を実際に推進する際のリーダーシップが求められるでしょう。
HRBPを導入するステップ
HRBPは企業の経営戦略や人事戦略をより効果的に実行するための重要な役割を担います。しかし、具体的にどのように導入する上でどのように進めれば良いかわからない方も多いでしょう。ここでは、HRBPを導入する際の具体的なステップを4つの主要なフェーズに沿って解説します。
1.現状分析とニーズの特定
現在の組織の人事戦略や人材の状況を詳細に分析することで、HRBPが果たすべき役割や組織のニーズを明確に特定できます。これは、組織が直面している課題や将来のビジョンを理解することが、HRBPが効果的に機能するための基盤となるためです。
例えば、組織内での人材の流動性が低い場合、HRBPはキャリアパスの構築や育成プログラムの強化を提案することで、人材の活性化を図ることができるでしょう。
2.HRBPの役割と責任の定義
次に、導入するHRBPの具体的な役割や責任を明確に定義します。これは、経営層や事業部門との連携の方法、人材戦略の策定や実行の範囲など、HRBPの業務内容を詳細に洗い出すことで、組織全体がHRBPの機能と目的を理解し、協力する土壌を作るためです。
例えば、HRBPが経営戦略の策定に関与することを明記することで、事業部門とのコミュニケーションがスムーズになり、組織の目標達成に寄与するでしょう。
3.適切な人材の選定と育成
HRBPとして活躍するためのスキルや経験を持つ人材を選定し、さらにその能力を高めるための研修や育成プログラムを実施します。これは、HRBPの役割は多岐にわたるため、適切なスキルセットと経験を持つ人材の確保が不可欠であり、その後の成果に直結するためです。
例えば、既存の人事メンバーからポテンシャルのある人材を選定し、外部研修やOJTを通じてスキルアップさせることで、HRBPとしての資質を高めることができます。
4.フィードバックと評価の仕組みの構築
導入後のHRBPの活動を評価し、組織のニーズに合わせて適切に機能しているかを確認するためのフィードバックや評価の仕組みを構築します。これは、HRBPの活動の効果を定期的に確認し、組織の変化やニーズに応じて柔軟に対応し、必要に応じて改善できるためです。
例えば、定期的なパフォーマンスレビューや360度フィードバックを通じて、HRBPの強みや改善点を明らかにし、継続的な成長を支援できます。
HRBPを導入する際の注意点
HRBPの導入は、組織の人事戦略を強化するための重要な取り組みですが、その導入には様々な注意点があることを念頭に置きましょう。ここでは、HRBPを導入する際に注意点を3つ解説します。
組織文化との整合性の確認
HRBPを導入する際、組織の文化や価値観との整合性を確認することが重要です。突然の導入や組織文化とのミスマッチは、HRBPの活動を妨げる可能性があります。
組織の文化や価値観をしっかりと理解し、HRBPの役割や活動が組織にフィットするかを確認するためのワークショップやミーティングを実施することが推奨されます。
コミュニケーションの徹底
HRBPの役割や活動内容を組織全体に明確に伝えることは、導入の成功にとって不可欠です。経営層や事業部門との連携が中心となるHRBPの役割を、全員が正確に理解しているかを確認するため、定期的な説明会やワークショップを実施することが必要です。
また、導入の目的や期待する成果についても明確に伝えることで、組織全体の理解と協力を得ることができます。
継続的な評価とフィードバック
HRBPの導入後も、その活動や成果を継続的に評価し、フィードバックを行うことが重要です。導入初期は特に、活動の効果や課題を定期的に確認し、必要に応じて改善策を検討することが求められます。
評価の基準やフィードバックの方法を明確にし、HRBP自体も自らの活動を振り返る機会を持つことで、継続的な成果向上を目指すことができるでしょう。
HRBPを導入している企業事例
国内ではHRBPを導入したことで、組織改革に成功し、事業成長につながった例が数多くあります。ここでは、具体的な企業事例を2社紹介します。
合同会社DMM.com
DMM.comは、「誰もが見たくなる未来」をビジョンに掲げ、50以上の多様な事業を展開し、持続的な成長を目指しています。この過程で、HRBPは事業部の意思決定やマネジメントをサポートし、事業の持続的成長を支える重要な役割を果たしています。
HRBPはデータドリブンなアプローチを採用し、HRデータや属性データを集約・整備することで、意思決定に有用な情報を提供しています。この結果、若手の抜擢が根拠を持って行われ、新しい風土が醸成されているのです。
さらに、HRBPは労務、採用、教育の各課題に迅速に対応し、未だ顕在化していない課題に対しても、事業部と協力して先見的な戦略を構築しています。
参考:HR NOTE|DMMの躍進を裏で支える、変化に強い「事業ドリブン」な人事戦略
株式会社メルカリ
メルカリのHRBP(Human Resource Business Partner)チームは、ビジネスの成功に向けて人材開発や人材戦略の立案をミッションとし、事業推進を担うリーダーの人事パートナーとして活動しています。その一環として、「Manager Peer Learning Session」というプログラムが導入されました。
このセッションでは、マネージャー同士が互いの経験や知見を共有し、学び合うことで、組織全体の強化と最適化が図られています。特に、マネージャーが抱える孤立感の解消や、チーム間の課題解決に焦点が当てられています。
こうした取り組みにより、メルカリは「採用に強いメルカリ」から「育成に強いメルカリ」への転換を目指しており、事業の持続的な成長と多様な挑戦を支える人材戦略の実現を進めています。
参考:mercun|マネージャーは孤独”な認識を変えたい。メルカリ流プログラム「Manager Peer Learning Session」を実施!
まとめ
HRBPは、組織の人事戦略を強化し、ビジネスの成功に貢献するための重要な役割を果たします。時代の変化が早く、ビジネスモデルや組織の変革が求められる中、企業規模や業態問わず、HRBPは一層求められるでしょう。
一方、その役割を果たすためには、多岐にわたるスキルや経験が求められます。十分な能力を有するHRBP人材は限られており、即戦力として自社で採用することは容易ではありません。
そのため、必要に応じて外部に委託することも検討しましょう。経験豊富な専門人材の知見やアイデアを教授できる上、正社員で直接雇用するよりも中長期的に見て人件費を抑えることができます。
弊社はこれまで多くの企業にHRBPの立ち位置での相談を受けてきました。その経験とノウハウを活かし、HRBPの役割を最大限に発揮するためのコンサルティングを提供します。
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